一見するとポップな雰囲気で、そういった要素も十分ありますが、かなり心理描写が深く見えてくる作品です。とあるルートで見られる『ちょうどいいから』というセリフは、鋭く突き刺さるように私の記憶の中に。
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『てんたま』は、プレイステーション版が2001年1月25日(木)に、ドリームキャスト版が2001年10月25日(木)に発売されました。主人公の『早瀬川椎名』を幸せにするために地上界にやってきた見習い天使『花梨』を中心に物語が繰り広げられるゲームです。
が、最初の『プロローグ』では花梨は登場せず、高校に入学したときに出会う女の子『渡瀬双葉』と椎名の物語が描かれます。初めてプレイステーション版を遊んだときはほとんど事前情報を集めなかったため、意表をつかれるとともに引き込まれました。違うゲームと同じ設定なわけですが、それでも知らずに見ると結構びっくりするかと。
なお、プレイステーション版も結構遊びやすいシステムですが、ドリームキャスト版は『夢のつばさ』や『Memories Off 2nd』にあった機能を全て引き継いで作られています。また初めて『口ぱく』が採用されたりなど、かなり演出の部分も作り込まれています。
そして、本編に入ると主人公の幼なじみである『篠崎千夏』と『相沢貴史』を中心に話が進んでいきます。二人にもそれぞれ見習い天使の『奈菜』と『葵』がいて、花梨といっしょに三人の幸せを探そうと努力します。
天使たちの『かわいらしい』姿とは対照的に『どろどろ』した展開もあったりしますが、登場人物たちの『ひたむきさ』により和らぐこともありますし、最終的には天使たちの『不思議な魅力』がゲーム自体の印象をあたたかくしている気がします。結末自体はハッピーエンドだけではないですが、受け入れやすいとも。
そして、このゲームでは椎名『以外』の視点に切り換わることが結構あったりします。ドリームキャスト版は、かわいらしい『アイキャッチ』が入るためわかりやすいですし、最初のプレイステーション版も『てんたまっ!』と女の子が叫んで視点が変化します。女の子を一人称として話が進められるため、想っていることが直接伝わってきますし、共感しやすい素直な心理描写が多いのではないかと思っています。
さらに、一番の名場面と思われる以下の画面のような楽しいイベントグラフィックもありますし、ドリームキャスト版では千夏に貴史がひきずられたりキノコが飛んだりと演出効果も多彩になっています。その一方『はっ』とさせられるイベントグラフィックも多く用意されていて、絵柄がきらいでなければかなり引き込まれるのではないかと。
私の一番のお気に入りは、椎名たちの中学時代の後輩『小高真央』と、真央が現在所属するラクロス部の先輩『吉沢初音』の二人だったりします。学年が違っているにもかかわらず『親友』という関係で不思議に見えるかもしれませんが、二人の性格ならありそうと思いましたし、実は結構いいコンビではないかと思うこともあったりします。
その一方、二人のルートに入ったときは複雑な展開が待ち受けています。それぞれバッドエンド以外に『トゥルーエンド』と『ハッピーエンド』が用意されていて、合計4つのエンディングを見ることができます。4つもあるため『ばらつき』はあると思いますが、かなりていねいに『心の動き』が描かれますし『相手のルート』に入ったときの描写は『てんたま』で最も魅力ある部分と思っていたりも。
ちなみに『My Merry May』も同じ方がディレクターを担当した作品ですが、いずれも描写がこまやかなところは本当に共通していると感じます。私としては、あたたかさが前面に見える『てんたま』の方が好みですが、それぞれ違った魅力が。
また場面ごとについた見出しも面白く、たとえば一つ上の場面は『仁義無き戦い』と題名がついていたりします。『真央ちん勝訴』という見出しもあって、思わず吹き出してしまいましたし『KID MIXセクション』にあった『女3人かしましい』や『会心の一撃!』も即座にその場面が思い浮かんだりして、かなり楽しかったです。
そして、ドリームキャスト版は花梨たちの後輩の『紅絹』と『加絵』によるアドバイスが追加されています。見かけによらず…という話はこれまでも書いていますが、ここでも意表をつく『毒舌』が繰り広げられます。なにげに椎名を評価する紅絹が『どつき役』な漫才でして、なかなか楽しかったりします。何回か遊ぶとレポートなしでも問題ないとわかることは、ここだけの秘密にしておきますが。
あと、プレイステーション版では『うらたま』という名称で収録されていた裏シナリオも結構お気に入りだったりします。本編では対象にならないユリユリこと『田中悠里』の『うらたま』は予想できない話でびっくりしましたし、ドリームキャスト版では奈菜と葵が主人公のシナリオも追加されていて、結構お薦めではないかと。