『ほたる』が放つ光は『緑』色に見えますから『朱』倉岳に『青』鷺島と、光の3原色が揃っているわけで、転移のとき見られる『フラクタル』の原色とも対応する…と聞いて、いやな予感がする方には一通り遊んでから読んでほしいと思う『ネタばれ』な話です。
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はじめにゲームよろず別館への追加を考えたときは、いつも通り紹介と感想だけの予定で、あえてネタばれまで踏み込むつもりはありませんでした。ですが、朝日が昇り そしてまた落ちるの魅力ある考察を拝見して、好きな作品について気が付いたことを記録として残したく思い、このページの作成を決心した次第です。
インフィニティシリーズの特色として、ゲームの中で『正しい』ことは、その世界として『正しくなる』ことがあげられます。つまり、その世界における技術水準など裏付けが全く存在しなくても問題ないですし、たとえば『量子暗号』を聞いたことがないと『?』と思われそうな時空間転移装置の説明も、結局は『転移するから転移する』わけです。
ちょっと違う視点から眺めますと、たとえば3次元の座標系(x,y,z)に時刻を加えて(x,y,z,t)とするだけで、数学の『形式』としての『4次元』は成立しますが、このとき位置と時刻という『意味』が違う対象を同様に取り扱えることまでは保証されません。ですが『空間と時間を同時に歪められる』のならば、その通りに歪むことになります。
また今回は矛盾する現象が発生しても、現在の状況が変化しないことは保証されているようです。たとえばココロ編グッドエンドの邂逅や、サトル編エピローグで語られるテラバイトディスクから判断してのことですが、かりに同じ時間に居合わせたとしても『いきなり消える』ようなことが『ない』方針に思われます。つまり、自然治癒のような『つじつま合わせ』を世界が自ら行うことはないように見受けられます。
そして、これらのことを踏まえて転移する世界について検討を行うとき
プレイヤーの世界への参加を前提にしないと、考察が行き詰まる
ことは間違いないと思います。ビジュアルファンブックでは中澤工さんも
また、今回のストーリーの背後にあるテーマとして「ゲーム内のキャラクターとプレイヤーの関係は?」というのがありました。
とコメントされていますし、プレイヤーの位置付けを考える必要があります。
以下は私が発売直後に作った表に、ちょっと手を加えています。3冊ある解説本で、最初に刊行された設定解説ファンブックの時点で解明されてはいますが、本編により確実に判明する『事実』は以下のようになります。
実体 行き先 朱
倉
岳青
鷺
島穂
樽
日悟 こ
こ
ろ胎
児
α胎
児
ω犬
伏穂
鳥悟 ☆ ○ ○ こころ ☆ ○ ○ 胎児α ☆ ○ 胎児ω ☆ ○ 犬伏 ☆ ○ ? 穂鳥 ☆ ? ○
表の左側は『本来の実体』が存在しているべき場所を、右側は意識が入り込んだ『相手』を意味しています。パーフェクトガイドも、双子の胎児それぞれが『悟・こころ』と『犬伏・穂鳥』と人格交換したと解釈していまして、以下の表のように整理できます。
実体 行き先 朱
倉
岳青
鷺
島穂
樽
日悟 こ
こ
ろ胎
児
α胎
児
ω犬
伏穂
鳥悟 ☆ 1 3 2 こころ ☆ 2 1 3 胎児α ☆ 3 2 1 胎児ω ☆ 1 3 2 犬伏 ☆ 2 1 3 穂鳥 ☆ 3 2 1
右側の数字は、意識の行き先が『1→2→3→1→2→3→1→…』のように循環することを示しまして、縦の『心』も横の『身体』も一個ずつしか存在しないわけですから、一行または一列につき『1』と『2』と『3』は一つずつしか『ありえない』ことになります。
ですが、私の認識では胎児の区別がつく描写はなかったはずで、胎児αと胎児ωが互い違いに組み合わさった、以下のような人格交換も考えられると思っています。
実体 行き先 朱
倉
岳青
鷺
島穂
樽
日悟 こ
こ
ろ胎
児
α胎
児
ω犬
伏穂
鳥悟 ☆ 1 3 2 こころ ☆ 2 1 3 胎児α ☆ 3 1 2 胎児ω ☆ 2 1 3 犬伏 ☆ 2 1 3 穂鳥 ☆ 3 2 1
『ナイフめった刺し』や『カンパン独り占め』を、全て一人に押しつけたくない気持ちが上記のように考える理由の一つですが、サトル編エピローグで犬伏が抱きかかえる胎児が女の子のωであることとも矛盾しないですし、可能性の一つとしてはあるかと。
サトル編で『優希堂悟』は、オーストラリア行きのチケットを持っていて、しかも長期間滞在する予定だったことがわかりますが、
時間を歪めたい場合には、その長さに応じて距離も必要になる
ことが理由ではないかと考えています。上記の根拠は以下の通りです。
そして、実現方法の詳細には複数の可能性がありますが、大きくは
優希堂沙也香を十年前の世界から連れてくる
ことが、当初の『ユウキドウ計画』であったように思われます。そこから3点間転移に変更された理由は…事故に巻き込まれた黛鈴を救いたかったか、ゆにとの接触か。
一番の謎ではないかと思われる『セルフ』と『アイツ』ですが、基本的にプレイヤーと認識されている印象があります。ですが、全てに納得のいく説明は存在しないため『セルフとアイツは違う』という仮説を立ててみたいと思います。
セルフはプレイヤー『自身』と考えるのが自然ですが、アイツの方は『創造主』である制作サイドではないかと最近考えています。犬伏がつぶやく『セルフはどこ?』というセリフは、意志決定に関与できそうなプレイヤーを求めての独白ですが、ユウキドウ計画失敗エンドで黒服の悟が指す『アイツ』は、計画している通りに進行しない世界を形作った相手のことではないかと思うわけです。
また、黒服の悟が口にする『多世界解釈』という言葉から関心を抱いて読み始めたシュレディンガーの猫がいっぱいという書籍では『観測がなければ存在はない』とするコペンハーゲン解釈に対して『観測によって状態が一つだけに』なってしまうことはなく『共存する複数の状態がそのまま存在し続ける』多世界解釈を、量子力学における『自然な説』として紹介しています。
たとえば『さいころを振る』ことを考えたとき、コペンハーゲン解釈では振った結果を観測することにより一つの状態が残り、どの状態が残るかは『6分の1の確率』です。これに対して、多世界解釈では1から6の目が出ている、各々の状態が共存していて『6分の1の共存度』で存在し続けることになります。
つまり『多世界解釈では、電子であろうと観測器であろうと、それを見ている人間であろうと、すべてのものを一つの世界、つまり一つの状態として扱います』ので、遊ぶ行為によって世界に組み込まれてしまう、観測するだけのプレイヤーを黒服の悟が『アイツ』として憎む理由がなくなります。
結論として『Remember11』という作品は、これまで観測によって並列世界から一つの結末を選び出せる『神様』であったプレイヤーを、悟たちと同じレベルの『道化』として無限ループに叩き込んだ『地獄の怪作』だったのではないかと。
かつて子供のころ『スカートの中に世界はある』との言葉を聞いたことがありますが『Ever17』でグランドフィナーレのあと聴ける、笠原弘子さんの歌声を思い出したとき
Aqua Stripe → 青と白のストライプ
という関係から『Remember11』が間違いなく『Ever17』の続編であると確信しました。笠原弘子さんが演じる『茜ヶ崎空』の名前も、グランドフィナーレの『背景』も、そもそもLeMUを取り巻く『アクア=水』色の構成も、全て『青と白』を意味していたわけです。