桜の夜に思うひと

Written by 二級抹茶.
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はあ……

ため息が一つ、机の上にこぼれた。
街灯の明かりに桜の花びらが照らし出される3月の夜、
彼女は机の上にほおづえをついて、一人思いに沈んでいた。
時折窓ごしに桜をぼんやり眺めては、またうつむいてため息を繰り返す。
机のすみには読みかけのまま開かれた本と、クラス日誌。
ふと彼女は、一年間ずっと使ってきた日誌の方に目線を移す。
「この日誌を書くのも明日までなのね……」

クラス委員長として、私はあえて嫌われ役になっていたと思う。
すべきことをしないで後悔するのが、何よりも嫌だった。
美化委員の一件も、たとえ誰にも理解されなかったとしても、
それが自己満足にしか過ぎないとしても構わなかった。
でも、クラスのみんなに認められたことより何より、
彼が誉めてくれたことが、私には一番嬉しかった。
人に嫌われることが当たり前で、全然気にしてこなかったのに、
彼がこんな私をどういう風に見ているのか、すごく気になる。
何度も何度も聞きたいと思った、だけど返事を聞くことの方が怖かった。
いつから私は、こういう気持ちになったのだろう……

あぁ、もうこんな時間なのね。寝なきゃ……
明日は終業式。
クラスメートとして会えるのは、明日が最後かもしれない。
4月からはいっしょのクラスではないかもしれない。
私の願いは、一度でも神様に届くことがあるのだろうか?
この願いが叶ったとして、そのとき私は素直に、
ありのままの私を見せることができるのだろうか……

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