AIR

【対応機種:Windows ジャンル:アドベンチャー 発売元:Key】

 評価はちょっと複雑なゲームですが『夏』などが印象深かったですし、感想を一通りまとめておくことにしました。ゲームよろずからはリンクを張っていませんが、ご意見や反論などは同じように受け付けています。

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はじめに

 まず、私は前作『Kanon』に対する総合評価はあまり高くなかったりします。キャラの言動が『感性と合わない』ことが最大の理由と思っていますが、その次の理由として『謎を残して終わらせる』展開を許容できなかったことがあげられます。

 これに対して『AIR』は、遊び始めた最初のうちは『わかりやすそう』な感じでしたし、オープニングで引き込まれたことも理由と思いますが『キャラも好印象』で楽しみつつ遊んでいました。実際には『わかりにくい』展開は健在で、それより気になった部分もあって評価を複雑にしているのですが、それについては以下で書きたいと思います。

 なお、できるだけ間接的な表現で『ネタばれ』を避けていますが『評価と印象』は特に『雰囲気やテーマ』の範囲でシナリオ終盤にも言及しています。

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紹介と感想

 『AIR』は、2000年9月8日(金)にKeyから発売されました。手を触れずに人形を動かす力を持った主人公が、海が見える小さないなか町でひとりの少女と出会い…といったアドベンチャーゲームです。

 ゲームを開始した直後にオープニングが見られますが、テーマソングの『鳥の詩』に合わせて『青空へと舞い上がっていく』場面はかなり鮮烈で完全に引き込まれました。『夏が好き』ということも理由の一つですが、私がこれまでに見たオープニングの中で5本の指には間違いなく入ると思っています。

 また、オープニングを見るとわかりますが『伏線らしきもの』がいろいろ登場します。私は完全に理解したわけではありませんが、遊んでいくうちにはっきりとわかる部分もあって、それについては『なるほど』と思いました。

 登場人物はいずれも『かなり個性的』ですが、ゲームの最初の方からヒロインたちの『違った一面』を知ることができて好印象でしたし、マニュアルでは『サブキャラクター』となっている晴子たちも特に抵抗なく受け入れることができました。

 観鈴には晴子が、佳乃には聖が、美凪にはみちるがいて、それに主人公を加えた『かけあい漫才』が展開されることも『楽しい』と感じた理由の一つです。会話する中で主人公は『ボケ』役になったり『つっこみ』役になったりと役割が変化しますし、相手も『お約束』があれば『予想外の言葉』もあって私には好感触でした。

 シナリオの前半はコメディを織り込んだ『日常生活』が中心となっていますが、3人のヒロインの話に入るあたりから『幻想的な物語』が繰り広げられていきます。最初から主人公が法術という『力』を持っていたりと、幻想的な雰囲気作りもなされているため話には入り込みやすかったですし、えっちな展開を期待して買ったわけでもないので『取って付けた』作りになっていても特に気になりませんでした。

 そして、言葉が綺麗なことも評価したい部分です。いわゆる『文学的な表現』でしたら違うゲームでもよく見かけますが、そうではない会話の『ちょっとした一言』などにも『はっ』と思わせるような言葉が選ばれていて、印象深かったです。

 あと絵柄については『好みの問題』になってしまいますが、樋上いたるさんの以前の作品より洗練されて描き込まれているように感じました。描き込まれているといえば、オープニングの青空から始まる『背景』もていねいに描かれていて『真夏の雰囲気』を十分に感じ取らせてくれたように思います。

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評価と印象

 一通り最後まで遊びましたが、最も心を打たれた部分が『終盤』ではなかったことが評価を複雑にしています。謎が全て解けないことも一因とは思いますが、それなりに自分の解釈も持てましたから最大の理由ではない気がしています。

 このゲームで描かれているテーマは『愛』だと思いますが、それは恋愛というよりは『親子の絆』としての愛情であり『疎外感』を感じさせる部分があるように思えました。意識して作られたとは思っていませんが、性別が違うかぎり理解できない壁があって決して乗り越えることができない…と遊んでいるうちに感じてしまったことが、終盤の展開に入り込みにくかった要因ではないかと考えています。

 また、最後まで遊んでも佳乃の話が一番のお気に入りということも理由の一つです。大切な場面で伏線が活かされていたりなど好印象でしたが、本線の物語から見ると『浮いている』ところが少し気になっています。ふだんは中心となる話が一番でなくても気にしない方ですが、それは中心の方にも一定以上共感できて初めて成り立つようで『総合評価』を考えるとちょっと迷ってしまう部分です。

 でも、評判通りの音楽に決して負けていない『物語』が描かれていると思いますし、思わず『じわっ』とくる場面も数多くありましたから主観的な評価でも高い位置に来る作品です。前述したような問題もありますが、オープニングの青空で抱かせた期待を決して裏切らない内容であったと感じています。

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おわりに

 このゲームを『綺麗で不思議なおとぎ話』と形容したことがありますが、それは決して子供向けという意味ではなく『子供のころに読んだお話』が現在でも読みたくなる形で再現されているように感じたからです。『あらすじ』だけ聞くと似た話を読んでいても、きちんと雰囲気が形作られていることが『一番の違い』になっている気がします。

 次回作があれば『感動』にこだわらない『さわやかな恋愛ゲーム』でもかまわないと私は思っていますが、期待もあるだろうし大変そう…と思ったりする今日この頃です。でも、いつかまた違った『不思議な世界』を見ることができればと。

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